重要ながら軽視されがちなセットプレーを解説「セットプレー最先端理論」

技術・戦術

はじめに

サッカーを長年見ているとセットプレーが重要という話は良く聞くだろう。
ところがセットプレーを深く取り扱った本は、ほぼ見た事がない。
今回紹介するのは、そんな重要でありながらも軽視されがちなセットプレーの本である。

タイトル:「セットプレー最先端理論」
著者:ジョバンニ・ビオ 片野道郎
カテゴリー:技術・戦術

どんな本なのか

セットプレー専門コーチであるイタリア人ジョバンニ・ビオが、セットプレー理論・哲学を分かりやすく解説する本である。

こんな方にオススメ

・セットプレーに関する解説書を探していた人に。
・とにかくサッカー観戦が好きな人に。
・サッカー指導者又は指導者を目指している人に。

オススメとマトリクス

おすすめチャート解説

・文章を読んで、ある程度頭の中で映像を描ける方のほうが分かりやすいものの、難解な表現は少ない。
・セットプレーに特化した戦術書ではあるが、セットプレー専門コーチが誕生する物語という側面でも楽しめる。
・稀有なテーマを取り上げた書籍として満足できると思う。

読者層マトリクス解説

・ある程度高めの年齢層向けだと思うが、チームでプレーするようになるジュニアユース年代から読めるだろう。
・セットプレーという狭いジャンルを扱っている事もあり、コアなファンのほうが堪能できると思う。

感想など

なかなか面白い本に出合えたというのが率直な感想である。
セットプレーに特化した本は今まで無かったと思う。

共著者であるジョバンニ・ビオは、おそらく世界初のセットプレー専門コーチではないだろうか。
本書では、ジョバンニ・ビオが如何にしてセットプレー専門コーチに就いたかにも触れている。
ひとりのサッカー好きの物語としても面白いと思う。

本書は、セットプレーの専門書ではあるが、数多くのパターンが示されるわけでは無い。
内容をそのままコピーして、実戦ですぐセットプレーの得点力が向上するという事でも無いと思う。

大切なのは、ここに記されている事を基に、自分たちで様々パターンを考える事にある。
自ら考えて実践する、それこそがサッカーの本質ともいえるのではないか。

とは言え、考え方はいたってシンプルだと思う。
攻撃側は、如何に味方をフリーとするか、守備側はその逆である。

チームに在籍する選手の特性を見ながら、考える事でもある。
例えば、ヘディングが強い選手にも、走り込みながらのヘディングが得意な選手もいれば、その場ジャンプでのヘディングが得意な選手がいる。
それぞれの特性に合わせた配置を考える必要がある。
この辺は、以前紹介した「中村俊輔式サッカー観戦術」でも似たような記述があり面白い。
(「中村俊輔式サッカー観戦術」の紹介はこちらから)

セットプレーの重要度は多くの人が理解しているにも拘らず、プロチームの練習では軽視されがちだと言う。
これは、練習の時間が足りないという、単純な話らしい。
逆説的ながら、練習時間を多くとる事が多いであろう日本の高校サッカーで、凝ったセットプレーが見られるのも頷ける話である。

そして著者は、日本人のメンタリティはセットプレーを武器とするのに向いているという。
細部へのこだわり、献身的な姿勢、与えられたタスクを完遂する能力など。

2022年日本代表チームはセットプレーコーチを採用した。
中村俊輔選手や遠藤保仁選手など、有能キッカーが不在のチームで如何に手腕を発揮できるか。
期待している。

まとめ

今回は「セットプレー最先端理論」を紹介してきた。
重要であるはずなのに、軽視されがちな非常に稀有なテーマを取り上げた良書である。
今までこのような本が無かったのが不思議なくらいだ。
サッカーを指導する人にも観戦する人にもオススメできる一冊である。

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