フィジカルとメンタルを学ぶ「サッカー”ココロとカラダ”研究所」

チームスタッフ

はじめに

長年サッカーに関わってくると、様々な知識が増えて、特に戦術について語る事が多くならないだろうか。
だが、戦術だけでは言い表せない試合にも出会うことだろう。
それがサッカーの醍醐味であり、面白さなのだが、戦術以外の知識を増やしたくなる人もいるだろう。
そんなあなたに、こちらをオススメする。

タイトル:「サッカー”ココロとカラダ”研究所」
著者:片野道郎
カテゴリー:チームスタッフ

どんな本なのか

サッカーにおける4つの側面「テクニック」「戦術」「フィジカル」「メンタル」のうち、「フィジカル」「メンタル」について理解を深めようという本である。

こんな方にオススメ

・サッカーに関するあらゆるものに興味がある人に。
・指導者やチームスタッフとして活動している・活動したいと思っている人に。
・戦術論から少し離れた知識を求めている人に。

オススメとマトリクス

おすすめチャート解説

・難しいテーマを扱っているが、対談形式で問題を議論をしながら少しずつ理解を深めようという形になっており、難解というほどではない。
・「フィジカル」と「メンタル」に比重をおいた本だが、「テクニック」「戦術」を含めた4つの要素は切り離せないとしており、統括して話が展開されていく。
・指導者は当然のこと、よりサッカーを深くしりたい人にも学びがあり、満足できる内容だと思う。

読者層マトリクス解説

・指導者や何らかのチームスタッフになる様な年齢層向けであろう。
・ある程度サッカーに精通している人や、サッカーに深く関わっている人のほうが理解しやすいだろう。

感想など

正直な感想として、なかなか興味深い本に出合えたという印象である。

本書は、2012年~2016年までに「ワールドサッカーダイジェスト」誌に掲載されたものを、2019年時点の情報も盛り込んで取り纏めた本である。
この記事を書いている2022年現在では、更にアップデートされた情報があるのだろう。

しかしながら、本書に記載されている内容だけでも十分学びがあると思う。

個人的に興味の沸いた項目をひとつ紹介していこう。

それは、各時代におけるフィジカルトレーニングの変貌である。
サッカーの世界にフィジカルコーチという存在が入ってきたのが1980年代のころであったという。
その頃から1990年代初頭にかけて、アリーゴ・サッキなどの先進的な監督が、プレッシングスタイルのゾーンディフェンスを導入し始めている。

トレーニングも変貌し、スピード・パワー・持久力といった特定の能力を高めるものに細分化されていった様だ。
プレッシングスタイルは、ゆっくりボールを回すスタイルを駆逐していき、フィジカルの重要性が増していった。

また、1990年代中頃から、マシンを使った過剰なトレーニングが行われ、その結果筋肉系の故障や身軽さが失われていった。
このあたりは、以前紹介した川島永嗣選手の「準備する力」で記載されているペルッツィの例と一致する。
(「準備する力」の紹介はこちらから)

2000年代初頭になる頃には、既に「テクニック」「戦術」「フィジカル」「メンタル」を全体として捉え、個別に取り扱う事は無意味と言われ始めたそうだ。
更に2010年代以降になるとGPSによるデータ収集で、負荷のコントロールがより緻密に出来るようになってきている。

現在はもっと進化しているのであろう。
この変貌が、具体例を交えながら詳細に説明されており、それだけでも一読の価値があると思う。

他にも
・戦術的ピリオダイゼーションについての考察
・シーズン中のトレーニング構成
・チームスタッフの役割分担
・現代の選手に求められる能力(具体的な選手名をあげている)
など盛りだくさんで満足度が高い。

選手の育成に関する記述は、指導者・親・マスコミ・サポーターとの関わり方について考えさせられるものがあった。

全体的に濃いめの内容で、他のサッカー関連書籍では得る事が出来ない学びがあるだろう。

まとめ

今回は、「サッカー”ココロとカラダ”研究所」を紹介してきた。
興味深い内容が多く、一気に読み進めた。
他では味わえない気付きがある良書だと思う。
いい本に出合えたなと思う。

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